長谷川農場長直伝!品質アップと高収量のための稲作栽培 - 4

長谷川農場長直伝!品質アップと高収量のための稲作栽培

第4回目の内容

  1. 2018年7月の気象を振り返る
  2. 稲の生育状況
  3. 今後の栽培管理
  4. 病害虫の発生状況と対策

♦1 2018年7月の気象を振り返る

近年にない酷暑の7月に
高温・多照・少雨の日々

7月上旬の中頃は、台風や梅雨前線の影響で大雨となりましたが、その後高気圧に覆われ晴れの日が続きました。上旬の平均気温は、平年に比べかなり高く(2.9度)、日照時間も多く(148%)なりました。降水量も平年比291%と2倍以上に。

7月9日梅雨明け以降、7月中旬以降の天候は、一転して太平洋気圧に覆われ厳しい暑さとなりました。中旬の平均気温は、平年に比べかなり高く(3.4度)、日照時間もかなり多く(257%)なりました。降水量は平年比6%と小雨に。7月19日には、気象庁から高温に関する異常天候早期警戒情報が発令されました。

福井では、7月20日以降4日連続で気温が35度を超える猛暑日を記録しました。下旬の天候も、厳しい暑さは続き、平均気温は、平年に比べかなり高く(3.0度)、日照時間もかなり多く(157%)なりました。降水量は平年比0%とかなり少なくなりました。北陸地方の1ケ月予報(7月21日〜8月20日)でも、期間の前半は、特に気温の高いが続くと発表されました。

♦2 稲の生育状況

高温により生育が早まっています!

いずれの品種も全体的には高温・多照の影響により、生育が平年に比べ早まっています。坂井農場の生育状況は次の通りです。

◎ハナエチゼン

生育前半は、草丈やや長く茎数は少な目でしたが、6月上旬に目標茎数を確保しました。葉色は平年に比べやや淡く、幼穂形成期は6月27日で平年並みでした。出穂期は7月15日で平年に比べ3日早くなりました。

コシヒカリ圃場

◎コシヒカリ

生育前半、草丈は平年並みからやや短く。茎数もやや少な目でしたが、平年同様6月20日頃に目標茎数を確保しました。葉色は平年に比べやや淡く、幼穂形成期は平年に比べ2日早い7月8日でした。
7月12日現在、草丈69.7cmで平年(72.1cm)よりやや短く、茎数453本/m²で平年(415本/m²)よりやや多い状態です。出穂期は7月29日で平年に比べ3日早くなりました。

コシヒカリ圃場

◎直播コシヒカリ

移植同様、草丈は平年並みからやや短く、茎数はやや少な目でしたが、6月中旬以降に目標茎数を確保しました。6月下旬以降、茎数は増加しました。
7月12日現在、草丈68.5cmで平年(78.0cm)より短く、茎数528本/m²で平年 (549本/m²)よりやや少ない状態です。
5月7日播種したコシヒカリの幼穂形成期は7月13日、平年に比べ3日早くなりました。
出穂期は8月4日で平年に比べ3日早くなりました。

直播コシヒカリ圃場
今年はニカメイガが少ないなあ

◎あきさかり

生育初め、草丈は平年に比べやや長く、その後平年並みから短めになりました。茎数は少な目でしたが、その後生育旺盛となりました。
7月12日現在、草丈65.3cmで平年(72.0cm)より短く、茎数495本/m²で平年 (492本/m²) 並み。幼穂形成期は7月13日で平年に比べ1日早くなりました。出穂期は8月初め頃と予想されます。

いちほまれの生育状況

本年度県下で2017年の5倍の約600ha、380経営体で栽培されています。坂井農場では、約40a栽培しエコ肥料試験や肥料の施肥法の試験を行っています。
5月15日に移植したいちほまれの全層施肥と側条施肥の生育は下記の通りです。

側条施肥区が全層施肥区に比べ草丈が長く、茎数もやや多い傾向となっております。
幼穂形成期は、7月14日で、出穂期は8月3日でした。

2018年7月25日の生育状況

区分 草丈(㎝) 茎数(本/m²) 葉色
全層施肥 84.0 380 4.0
側条施肥 90.3 400 4.1
いちほまれ圃場

とにかく連日の猛暑により、生育が早くなっています。

♦3 今後の栽培管理

暑い中でもポイントは水管理

先日発表された北陸地方の1ケ月予報(7月21日〜8月20日)では、期間の前半も特に気温の高いが続くと予想されています。

実は平成6年も本年同様、幼穂形成期・出穂期から高温多照が続き、登熟の進行が急速に早まりました。今後の栽培管理は、間断通水で登熟向上・適期収穫で胴割防止に努めてください。

稲は今から、一番重要な登熟期を迎えます。ハナエチゼンは登熟期を、コシヒカリ・あきさかり・いちほまれは出穂期から登熟期です。特に出穂前後は、花水(はなみず)といい、水が一番重要な時期だといわれております。また台風やフェーン時などは、深水管理を行い、稲体を守りましょう。

暑い日が続き水管理も大変ですが、もうひと踏ん張りして、稲に活力を与えましょう。

水管理

稲は、光合成によりデンプンを生産し、胚乳に溜め、稲の種子であるお米を充実させていきます。
昼......稲は太陽の光で光合成を行いデンプンが生成されます。この登熟期に晴天が続くと光合成が盛んに行われ、お米がたくさん実ります。
夜......稲は昼間に生成したデンプンを転流し蓄積します。しかし夜温が高いと光合成により作られたデンプンが消費されてしまいます。

稲にとって、

  • 夜間は気温が低い方がいい
  • 昼間は暑く、夜間は涼しい天候

が理想的です。特に近年は、最低気温の変化により未熟粒の発生が課題です。夜温で高温が続くときは特に注意してください。

生育ステージに合わせた水管理について

生育ステージ 水管理等
幼穂形成期~出穂期 間断通水の励行。特に穂ばらみから出穂期は、イネの茎葉からの蒸発散が多く、水分不足が幼穂長の成長にも影響するため、圃場を乾燥させないことが重要。
出穂期~出穂後20日間 出穂後は稲の根の老化が始まります。間断通水をこまめに実施し根に酸素と水分を供給・葉の活力を保ち登熟を順調に促し未熟粒を防止。
出穂後20日~刈取り前 刈取り5〜7日前まで間断通水を実施。早期落水は収量・品質の低下につながります。適期刈取りに注意。

今さら聞けない、けど教えて!

出穂期から収穫期までの穂の状態は、次のような文言で表現をしています。

名称 時期
出穂期(しゅっすいき) 水田全体の40〜50%が出穂
穂揃期(ほぞろいき:出穂期から2〜3日後) 水田全体の80〜90%が出穂
傾穂期(けいすいき:出穂期から7日後) 穂が重くなり傾き始める時期
乳熟期(にゅうじゅくき:出穂期から14日後) 稈、籾ともに緑色で籾は圧砕すると乳汁となる時期
黄熟期(おうじゅくき:出穂期から21日後) 葉が黄変し稈も大部分が黄緑色となる時期
成熟期(せいじゅくき) 籾外観の全体が黄変し米粒は硬くなる時期

稲の登熟期間は品種やその年の天候によっても異なりますが、本県では早生の成熟期は、出穂期から約32日後、中晩生のコシヒカリでは約37日後、あきさかりでは約40日後にそれぞれの成熟期に達します。しかし2018年は出穂後、平均気温がかなり高めに推移していることから成熟期はかなり早まりそうです。

成熟期の予測は次のように立てます

  1. 出穂期からの積算温度で成熟期を予測(平均気温)
    ハナエチゼン(860度)約32日
    コシヒカリ(990度)約37日
    いちほまれ(1030度~1130度)約40日
    あきさかり(1070度)約40日で
  2. 青籾の割合
    1穂(約100粒)に青籾が10粒(約10%)

  3. 籾水分の測定
    水分25%以下

♦4 病害虫等の発生状況と対策(2018年7月30日現在の病害虫発生予察予報)

病害虫 発生状況と対策
中晩生
穂いもち
穂いもち
発生時期
初発期は8月2半旬
発生量
平年、前年より少ない
対策
葉いもちの発生がないところでは穂揃期に薬剤を散布。葉いもち発生が見られる圃場では出穂直前と穂揃期の2回防除を行う。
紋枯病
紋枯病
発生時期
平年よりやや少なく、前年より多い
対策
  • 穂ばらみ期の発生株率が10%以上、中生では20%以上ならば防除が必要である。
  • 粉剤・液剤での防除は、穂ばらみ期〜出穂直前と穂揃い期の2回行う。散布は株元の病斑に薬剤が十分に付着するようにする。
斑点米カメムシ類
ホソハリカメムシ
発生時期
加害盛期は8月1半旬
発生量
平年並み、前年よりやや多い
対策
  • 粉・液剤での防除は、穂揃期~乳熟期と糊熟初期の2回散布を行う。
  • カメムシ類は、水田の周辺部に多く発生するので、水田防除の際は畦畔も含めて防除する。
  • 斑点米算出能力の高いホソハリカメムシ、トゲシラホシカメムシなどの発生が多い場合は、さらに収穫14〜7日前にも防除する。
  • 出穂期以降の草刈りはカメムシ類の水田内への侵入を助長するので行わない。
  • 水田内、大麦跡地等の除草対策にも留意する。