長谷川農場長直伝!品質アップと高収量のための稲作栽培 - 3

長谷川農場長直伝!品質アップと高収量のための稲作栽培

第3回目の内容

  1. 2018年6月の気象を振り返る
  2. 稲の生育状況
  3. これからの栽培管理
  4. 病害虫の発生状況と対策
  5. 農場参観デー報告

♦1 2018年6月の気象を振り返る

6月は高気圧に覆われて晴れた日がありましたが、低気圧、梅雨前線の影響もあり雨や曇りの日が多くありました。全体的に6月の平均気温は、福井で平年より高く(1.0度)、日照時間も多かったようです(167%)。一方、降水量は平年比55%とかなり少ない結果でした。梅雨入りは、6月10日頃、平年(6月10日)に比べやや早く入梅した模様です。
6月上旬の平均気温は平年より1.1度高く、日照時間も平年比120%と多く、降水量は平年並み。
6月中旬の平均気温は平年より1.1度低く、日照時間、降水量ともに平年並み。
6月下旬の平均気温は平年よりかなり高く(2.8度)、日照時間もかなり多い(196%)。降水量は平年に比べ少なく(23%)なった。
7月初めの平均気温は平年より高い。その後台風7号の影響により全国的に大雨となり大きな影響をもたらした。台風通過後、高気圧に覆われ7月9日梅雨明けとなった。昨年より24日、平年より16日早く過去3番目の早さとなった。

♦2 稲の生育状況

7月5日現在、定点調査の生育状況は、ハナエチゼン、コシヒカリ、あきさかりいずれの品種も全般的に、草丈は平年並み~やや短め、茎数はほぼ平年並みで比較的よい形のようです。稲体は、全体的には、コンパクトな姿ですが、6月下旬の天候によって少々姿が乱れているように思われます。

7月5日の状況(県下全域)

  ハナエチゼン
農試 坂井
農場
現地
移植
5/1
移植
5/1
移植
4/29
草丈
(cm)
本年 63.9 65.6 64.2
平年 65.3 65.1 63.2
茎数
(本/m²)
本年 572 493 495
平年 576 502 501
葉齢
(枚)
本年 11.6 11.4 11.6
平年 11.9 11.5 11.3
葉色
(葉色板)
本年 4.5 4.2 4.3
平年 4.8 4.8 4.5
  コシヒカリ
農試 坂井農場 現地・慣行 現地・特別栽培
移植
5/21
直播
5/10
移植
5/15
直播
5/7
移植
5/15
直播
5/3
移植
5/27
直播
5/8
草丈
(cm)
本年 56.5 60.4 59.5 53.7 55.8 59.4 55.0 54.6
平年 60.8 61.1 62.3 65.0 61.6 62.5 59.0 64.6
茎数
(本/m²)
本年 580 493 465 584 472 658 394 560
平年 516 615 456 575 449 595 474 534
葉齢
(枚)
本年 10.1 9.8 10.3 10.2 9.8 9.9 9.5 8.9
平年 10.3 9.8 10.4 10.2 10.1 9.8 10.1 9.8
葉色
(葉色板)
本年 4.2 4.3 4.0 3.9 4.2 4.2 4.0 4.1
平年 4.2 4.1 4.2 4.2 4.0 4.3 4.2 3.9
  あきさかり
農試 坂井
農場
現地
移植
5/1
移植
5/15
移植
5/17
草丈
(cm)
本年 56.5 54.6 56.1
平年 61.5 58.1 57.8
茎数
(本/m²)
本年 597 523 493
平年 657 526 500
葉齢
(枚)
本年 11.8 10.4 10.6
平年 11.5 10.4 11.0
葉色
(葉色板)
本年 4.3 4.4 4.4
平年 4.4 4.6 4.6

◎ハナエチゼン

生育前半は、草丈やや長く茎数は少な目でしたが、6月上旬に目標茎数を確保しました。葉色は平年に比べやや淡く、幼穂形成期は6月27日で平年並みです。
7月5日現在草丈65.6cmで平年同様(65.1cm)、茎数493本/m²で平年並み (502本/m²) 並み。出穂期は7月18日前後と予想されます。

ハナエチゼン圃場

◎コシヒカリ

生育前半、草丈は平年並みからやや短く。茎数もやや少な目でしたが、平年同様6月20日頃に目標茎数を確保しました。葉色は平年に比べやや淡く、幼穂形成期は7月8日ごろでした。
7月5日現在草丈59.5cmで平年(62.31cm)に比べやや短く、茎数465本/㎡で平年 (456本/m²) 並みとなっています。

コシヒカリ圃場

◎直播コシヒカリ

移植同様、草丈は平年並みからやや短く、茎数はやや少なでしたが、6月中旬以降に目標茎数を確保しました。6月下旬以降、茎数は増加し7月5日現在草丈53.7cmで平年(65.0cm)同様、茎数584本/m²で平年 (575本/m²) 並みとなっています。

直播コシヒカリ圃場

◎あきさかり

生育初め、草丈は平年に比べやや長く、その後平年並みから短めになりました。茎数は生育初めは少な目でしたが、その後生育旺盛となりました。
7月5日現在、草丈54.6cmで平年(58.1cm)より短く、茎数523本/m²で平年 (526本/m²) 並みとなっています。

あきさかり圃場

昨年の秋の台風の影響がじわり出ているかもしれません。秋にすきこんだ稲わらが雪の中でしっかり分解できず、窒素の発現が抑えられているからか、どの品種も全体的に草丈が短いようです。目標係数は確保していますので、今後の管理が収量に結び付きます。気を抜かずにがんばりましょう!

いちほまれの生育状況

本年度県下で2017年の5倍の約600ha、380経営体で栽培されています。坂井農場では、約40a栽培しエコ肥料試験や肥料の施肥法の試験を行っています。
5月15日に移植したいちほまれの全層施肥と側条施肥の生育は下記の通りです。幼穂形成期は、7月15日頃と予想されます。

2018年7月4日の生育状況

区分 草丈(㎝) 茎数(本/m²) 葉色
全層施肥 61.2 562 3.8
側条施肥 59.9 593 3.9
いちほまれ

♦3 今後の栽培管理

稲は今から、一番重要な時期を迎えます。
特に、観察する段階で最も重要なポイントは、幼穂形成期の判断と葉色の判断です。
幼穂形成期に入ると中干しから間断通水に水管理は変わります。また葉色の判断は稲の栄養状態を確認するうえで、重要な作業です。

(1)幼穂長の見方

幼穂確認の図

(2)葉色の診断法

いちほまれ葉色

いちほまれの葉色を調べています

コシヒカリ葉色

コシヒカリの葉色を調べています

幼穂形成期は「稲の赤ちゃんが作られる時期」と考えてください。具体的には穂の基(もと)が作られる時期で、出穂前33〜18日すなわち穂首分化期から頴花(えいか)分化期までの期間をいいます。

幼穂形成の生育ステージ

時期 幼穂長 備考
出穂前30日 穂首分化(穂の基ができる)始め
出穂前25日〜20日 幼穂長1〜2mm 籾の分化が終了(幼穂形成期)籾の数が決まる
出穂前18日 幼穂長8〜15㎜ 花粉が分化し始める
出穂前12日 幼穂長80mm 減数分裂期がはじまる。籾殻の大きさが作られる
出穂前7日 茎の先端が膨らむ(穂孕期)
出穂期 水田全体の50%が出穂(出穂期)

減数分裂期とは、
  • 雄しべと雌しべが作られる時期(生殖細胞が形成される)
  • 出穂前15~5日の期間のこと
  • 幼穂や籾殻が最も盛んに成長する時期

この時期に稲の栄養や環境が不良になると...

  1. 退化籾が多くなる
  2. 籾殻が小さくなり千粒重が軽くなる
  3. 登熟歩合が低下する

品種ごとの栽培管理を!

  • 中干し終了後は間断通水を
  • 土壌中の酸化状態を維持
  • 根の老化、下葉枯を防ぐ
  • 光合成能力の向上を促す

根は出穂期以降は発生しません。つまりこれまでの根を収穫時まで健康に保つことが重要なのです。
土の表面が乾き始めたら水を入れましょう。(入水→自然落水→乾く前に入水)

ハナエチゼン

  • 間断通水を励行し、根に水分と空気を供給すること。土壌水分が不足すると窒素の吸収が抑制されて、肥料の効き目が弱くなることがあります。
  • 入水側だけでなく排水側の乾燥も確認しながら水管理をおこなってください。

コシヒカリ

  • 幼穂形成期を迎えたら生育状況を確認して穂肥の施用などを行いましょう。
  • 幼穂形成期以降は根の活力を維持するために間断通水を収穫直前まで行いましょう。
  • 分施の場合、幼穂10㎜を確認して穂肥を施用します。2回目は1回目の7日後に2回目穂肥を窒素成分で2㎏/10a施肥します。
  • 地力が低く葉色を維持するのが難しいところでは、2回目の1週間後に3回目の穂肥を施用しましょう。また一括施肥のため葉色が著しく淡くなった場合は、2回目の時期に穂肥を施用します。

あきさかり

幼穂形成期まで、中干しを継続します。幼穂形成期を迎えたら間断通水に切り替えましょう。

いちほまれ

幼穂形成期まで、中干しを継続します。分施の場合、幼穂長1㎜を確認して穂肥を施用します。基肥一括肥料を使用していても幼穂形成期に葉色版で4.0より淡い圃場では、追肥を行ってください。

穂肥の目安と施肥基準

品種 穂肥1回目の目安 N施肥量(㎏/10a)
幼穂長 出穂前 葉色 1回目 2回目 (3回目)
コシヒカリ 10㎜ 18日 3.5 2 2 (1)
あきさかり 2㎜ 23日 4.0 2 2 (1)

(3回目)は低地力、乾田のみ

♦4 病害虫等の発生状況と対策(2018年6月29日現在)

病害虫 発生状況と対策
葉いもち 発生時期
進展期は7月3半旬、発病最盛期は7月下旬
発生量
平年並み、前年より多い
対策
苗箱施薬や常発地等、生育が旺盛で葉色が濃く葉が垂れている圃場で特に注意して観察。発病を見つけたら薬剤を散布し蔓延を防ぐ。
多発要因
夏季の低温、多雨、日照不足や窒素過多が多発の要因となる。
ニカメイチュウ 発生時期
第一世代成虫発生最盛期は平年より早い7月4半旬
第二世代幼虫加害初期は平年よりやや早い7月6半旬
発生量
平年並み、前年より少ない
対策
発生量が多いところで、粒剤を用いる場合は7月5半旬、粉剤・液剤を用いる場合は7月6半旬までに防除を行う。
紋枯病 発生時期
垂直進展初期は平年並みの早生7月3半旬中晩生7月5半旬
発生量
平年より少なく前年並み
対策
8月上旬までに出穂する圃場では穂ばらみ期~出穂直前、8月中旬以降に出穂する圃場では7月下旬に薬剤を散布する。穂ばらみ期の発生株率が10%以上、中生では20%以上ならば防除が必要。また、前年に多発した圃場や茎数が過多となった圃場では必ず防除を行う。
斑点米カメムシ 発生時期
加害盛期は7月5半旬
発生量
平年よりやや多く、前年より多い
対策
カスミカメムシ類の幼虫の発生時期にあたる7月上旬までに、畦畔や水田周辺の雑草地の草刈りを徹底し増殖を抑える。ただし、出穂期ごろの草刈りはカメムシ類の水田内の侵入を促すので行わない。水田内、大麦跡地等の除草対策にも気を配ること。
防除にあたっては、穂揃期~乳熟期(出穂3~5日頃)と糊熟初期(出穂10~14日頃)の2回防除を行う。また、カメムシ類は日中あまり活動しないため、防除時間は夕方か早朝に行う。

♦5 坂井農場参観デーにお越しくださり ありがとうございました

2018年7月7日農場参観デーを開催しました。当日台風7号の影響にもかかわらずたくさんの方が参加してくださり有難うございました。雨のため3階大ホールにおいて本年度の取組みや生育の特徴、今後の対策について説明しました。

坂井農場参観デー2018