長谷川農場長直伝!品質アップと高収量のための稲作栽培 - 2

長谷川農場長直伝!品質アップと高収量のための稲作栽培

第2回目の内容

  1. 2018年4月、5月の気象を振り返る
  2. 稲の生育状況
  3. これからの栽培管理
  4. 病害虫の発生状況と対策
  5. 帰化アサガオの繁殖を食い止めましょう

♦1 2018年4月、5月の気象を振り返る

4月の平均気温について、福井県では平年よりかなり高く1.7度アップになりましたが、日照時間は平年並みでした。降水量も平年比167%とかなり多くなりました。2017年同様気温の高い日が続き、生産者の方は育苗管理に苦労したことでしょう。
5月上旬の平均気温は平年より0.6度低く、日照時間も平年比76%と少な目に、逆に降水量は平年比264%とかなり多目だったようです。
5月中旬の平均気温は2017年同様平年より1.7度高く、日照時間は平年並み、降水量は平年比132%と多く推移しました。
全般的に天候は周期的に代わり雨が多かったものの昨年のような強風も無く、田植えは順調に行われました。

♦2 稲の生育状況

ハナエチゼン、コシヒカリ、あきさかりいずれの品種も5月2半旬、4半旬の低温と低日射、全体的に降水量が多かったこともあり、全般的には草丈長く、茎数少なく、葉色が淡くなっているようです。今後は浅水管理で茎数を増やし丈夫な株を作りましょう。
直播のコシヒカリは、5月2半旬の低温などの影響を受け、出芽苗立ちが平年に比べやや遅い傾向がみられます。

平成30年5月31日調査

  ハナエチゼン
農試 坂井
農場
現地
移植
5/1
移植
5/1
移植
4/27
草丈
(cm)
本年 25.0 27.4 24.8
平年 24.8 25.6 23.4
茎数
(本/m²)
本年 289 223 211
平年 302 247 202
葉齢
(枚)
本年 6.8 6.5 6.8
平年 7.0 6.6 6.2
葉色
(葉色板)
本年 4.8 4.4 4.5
平年 4.8 5.1 4.5
  コシヒカリ
農試 坂井農場 現地・慣行 現地・特別栽培
移植
5/21
直播
5/10
移植
5/15
直播
5/7
移植
5/17
直播
5/3
移植
5/16
直播
5/6
草丈
(cm)
本年 21.0 20.8 27.4 22.0 21.4 20.7 23.2 16.9
平年 22.1 16.3 24.9 19.3 20.8 19.6 20.8 21.0
茎数
(本/m²)
本年 83 58 79 92 70 130 82 95
平年 100 89 111 156 95 127 85 148
葉齢
(枚)
本年 4.1 3.6 4.4 3.3 4.0 4.4 4.5 2.6
平年 4.4 3.4 4.8 4.0 4.4 3.9 4.7 4.2
葉色
(葉色板)
本年 4.3 4.3 3.8 3.4 3.4 4.3 3.5 2.6
平年 3.5 3.7 4.0 3.9 3.6 4.0 4.1 3.7
  あきさかり
農試 坂井
農場
現地
移植
5/1
移植
5/15
移植
5/10
草丈
(cm)
本年 21.9 23.4 24.9
平年 25.2 21.3 22.1
茎数
(本/m²)
本年 210 75 149
平年 312 94 145
葉齢
(枚)
本年 6.9 4.3 5.0
平年 7.0 4.5 5.7
葉色
(葉色板)
本年 4.7 3.6 3.9
平年 4.6 3.8 4.5

いちほまれの生育状況

いちほまれは、本年度、県下で昨年の5倍、約600ha、380経営体で栽培されています。坂井農場では、約40a栽培し、エコ肥料試験や肥料の施肥法の試験を行っています。
5月末の生育状況は、同時期に移植した他の品種と同様昨年に比べると、茎数やや少なく、葉色もやや淡い傾向ですが順調に生育しています。

2018年6月1日の生育状況

  • 草丈 28.3cm(28.7)
  • 茎数 68本/m²(78)
  • 葉色 3.5(3.7)

5月15日田植えを行いました

肥料試験を行い、すくすくと育っています

♦3 今後の栽培管理

坂井地域の田植え最盛期は、ハナエチゼンは5月初め、コシヒカリ、あきさかりは5月16日・17日頃、直播は4月末から5月の連休ごろに播種されました。5月末に発表された気象庁3ケ月予報では、平均気温は高く、降水量はほぼ平年並みか多いと予想されております。月別にみると

  • 6月―前線や湿った空気の影響を受けやすく、平年に比べ曇りや雨の日が多い
  • 7月―低気圧や前線の影響により、平年と同様に曇りや雨の日が多い
  • 8月―太平洋高気圧に覆われて、平年同様に晴れの日が多い

と向こう3ケ月の天気を見通しています。

現在の稲の生育は、平年に比べ茎数はやや少ない状況。課題は水管理です。適正な水管理によって良い茎を確保し、穂揃いの良い稲姿を作り、登熟能力の高い稲に仕上げていく必要があります。

浅水管理で茎数を増やし丈夫な株を作りましょう!

水管理の基本的方法

生育時期 方法 備考
活着期 保温的水管理、深水管理 活着の良否を左右
分げつ期 浅水管理、田干し 良い茎の確保を左右
分げつ最盛期以降 浅水管理、中干し、間断通水 穂数の確保

育苗ハウスで過保護すぎるほど丁寧に育てられた苗です。人間でいえば生まれたばかりの赤ちゃん。急に世間に出て寒い思いをさせてはいけません。水分という栄養を与え、暖かく育ててください。それが"活着期"です。

田植え後の長期間にわたる深水管理は、田水温の上昇が遅く、分げつが遅れヒョロヒョロとした軟弱徒長を招きます。また、藻や湧きの発生を助長いたしますので、必要に応じ水の入れ替えや軽い田干しで根に酸素を与えましょう。
いずれの品種も目標茎数の80~90%を確保するまでは、水深2〜3cm程度の浅水管理で分げつを促進しましょう。(1株あたり18~20本、直播100本/m程度)

  • ハナエチゼン(目標茎数400本/m²)
  • コシヒカリ(目標茎数350~380本/m²程度)
  • 直播コシヒカリ(300本/m)
  • あきさかり(目標茎数420本/m²)

なぜ浅水管理にするの? それは水の貯めっぱなしをすると水中の酸素がなくなってしまうから。除草剤をきかせるために深水管理をしがちですが、逆に水を落として田干しをしたほうが育ちがよくなりますよ。

♦4 病害虫等の発生状況と対策

病害虫 発生状況と対策
葉いもち 水田でのいもち予防粒剤の散布時期は6月上旬。圃場で発生が確認された場合は、治療効果のある薬剤により防除する。
発生源
すでに病気になっている籾(罹病籾)の持ち込みと被害わら、稲以外の罹病植物などからの空気伝染(飛来)によりまん延する。主な伝染源は罹病苗の持ち込みや放置された補植用苗および隣接する圃場からの胞子の飛び込みである。
多発要因
夏季の低温、多雨、日照不足や窒素過多が多発の要因となる。
※山間地で日当たりが悪いところは特に気を付けてください
対策
補植用苗の早期の撤去
ニカメイチュウ 5月中旬のフェロモンによる誘殺数から越冬世代成虫の発生は平年より遅い見込みであるが、毎年発生が多い地域は防除が必要。防除適期は、粒剤は6月10日頃、粉剤と液剤は6月15〜20日頃
ニカメイガの生態
時期 前年の
9月~
5月下旬 6月上旬 7月下旬 8月上中旬
生態 幼虫越冬 越冬成虫発蛾最盛期(成長して発蛾。この時期の発生量が重要) 卵・1化 幼虫(卵の時期に防除すれば被害は少ない。幼虫の時に退治を!) 第1世代成虫 発蛾最盛期 卵・2化幼虫(被害に遭うと穂が白くなる。収量減に)
水稲 収穫 活着期 防除   防除

フェロモントラップで確認中

紋枯病 発生時期は6月末ごろ。近年坂井地域では、発生面積が最も広範囲になるので注意を要する。
発生源
昨年発生した菌核が圃場内の土の中で冬を過ごし、移植後に土中の菌核が水面に浮きあがってきて病斑をつくる。最初は株から株に水平にうつり、その後株の上部に垂直に進行するため同じ圃場で発生しやすい。
多発要因
紋枯病菌は、高温・多湿条件や過繁茂となった稲で発生が多い。
また病気にかかった株は、茎・葉(葉鞘や葉身)が枯れることから倒伏しやすくなり収量・品質の低下も懸念される。
対策
昨年紋枯病が発生した圃場では、菌核が残っており伝染源となる。前年に多発した圃場や茎数が過多となった圃場では必ず防除を行う。

その他(除草剤関係) 雑草は、圃場の高低差、水管理の不備等で多くなる。この段階では、漏水等の漏れを再チェックが必要。雑草が多く発生すると、稲に対して肥料や光の競合がおこり収量の減収や光の競合、カメムシの発生につながる。雑草の取りこぼしがある場合は、発生している草種にあわせ、中期除草剤や後期除草剤を使用する。
  • ヒエ
    湛水散布)クリーンチャ粒剤、ヒエクリーン粒剤、スケダチエース粒剤
    落水散布)クリーンチャEW剤
  • 広葉雑草
    落水散布)バサグラン粒、液剤
  • ヒエ+広葉雑草
    落水散布)クリンチャーバスME液剤
    湛水散布)ワイドアタックD粒剤 フォローアップ粒剤

*除草剤の使用にあたって、記載してある使用基準を必ず守る

♦5 帰化アサガオの繁殖を食い止めましょう

帰化アサガオは海外でも防除できずに難防除雑草になっているものが、日本に侵入したものです。
大豆やソバ等の圃場で繁茂し、作物の生育や収穫に大きな影響を与え、関東や東北地域で大きな問題になっています。本県においても嶺北北部で発生が確認されました。
帰化アサガオは、条件がよいと1株で数千~数万粒の種子を作ります。種子は寿命が長く、土の中で何年も生きていて、水田でも死にません。地域全体で侵入初期に種子を作らせないタイミングでの防除が重要です。

(1)帰化アサガオの特徴

  • 1年生雑草、種子で繁殖し15℃以上で発芽します。
  • 4月に出芽すると6月中旬ごろから開花し8月に開花盛期を迎える。遅いものは10月に開花するものもある。

(2)帰化アサガオの対策

  • 地域に入れない、広げない
    圃場周辺での見回り、防除が効果的である。見つけた場合は、再生防止のため地際から刈り取るか抜き取る。刈り取った株は、種子が熟するのを防ぐため、焼却するなど適切に処分することが望ましい。帰化アサガオを見つけたら、農林総合事務所または農協にご連絡ください。
  • 大豆の被害回避
    大豆圃場で蔓延した場合、圃場内での防除を。大豆2葉期で大豆バサグランの散布。
  • ソバ圃場へ侵入させない
    生育期間中に使用できる除草剤がないため、畦畔か圃場へ侵入させないこと。また、帰化アサガオは未熟な種子でも発芽能力が高いことから、畦畔で発生確認したら抜き取り焼却すること。