長谷川農場長直伝!品質アップと高収量のための稲作栽培 - 1

長谷川農場長直伝!品質アップと高収量のための稲作栽培

第1回目の内容

  1. 平成30年度の稲作りに向けて
  2. さあ今年も頑張るぞ!9つの基本技術で特Aだ
  3. 水稲の育苗管理 育苗期の病害虫発生予報
  4. 本年度の坂井農場の取組について
  5. 雑草対策、除草剤を上手に使おう

♦1 平成30年度の稲作りに向けて

平成29年度の稲作はどうだったのか
収量構成要素からひもとく、昨年のおさらい

平成29年の気象対策試験の品種別収量構成要素をみると移植栽培では「穂数は多い・一穂粒数は少ない・総籾数は少ない」という結果でした。
一穂籾数が少なくなった要因は次の2つが考えられます。

  • 幼穂形成期頃の葉色が淡く推移したこと
  • 有効茎歩合が平年より低下したため、茎葉内の糖(デンプン)の蓄積が少なくなったこと

つまり、「葉色が薄く、デンプンが生成できず、無駄な茎が多かった」と言えます。
直播栽培では「穂数は多い・総籾数もかなり多い」という結果が見られました。

平成29 年度産の登熟歩合については

  • 早生のハナエチゼンはほぼ平年並み
  • コシヒカリ、あきさかりは平年に比べやや不良

でした。

直播コシヒカリの登熟は、穂数が過剰になり、出穂期以降の日照不足の影響を受け、かなり悪くなったようです。

収量構成要素(平年比)

区分 1穂粒数 穂数
(本/㎡)
総籾数
(百粒/㎡)
千粒重 登熟歩合
ハナエチゼン 66(92) 452(104) 298(96) 21.7(99) 84(99)
コシヒカリ 73(88) 384(107) 280(94) 21.4(102) 80(94)
あきさかり 67(87) 470(105) 314(89) 21.7(100) 82(96)
直播コシ 71(99) 528(129) 372(132) 21.0(101) 60(75)

こうしたことから、昨年度の作柄をみるとハナエチゼン、コシヒカリ、あきさかりいずれの品種も収量面は平年、前年を下回りました。特にコシヒカリ、あきさかりにその傾向が 強かったようです。1等米比率は、坂井管内は、いずれの品種も95%を超え良好。結論を言いますと「品質は良いけれども、収量が減少した」と言えましょう。

平成30 年度の稲作にむけて
特Aを取り続けるために

日本穀物検定協会が実施する食味ランキング、誰もが気になりますね。平成29年産米の特Aの福井米の評価は

  • コシヒカリが6年連続
  • あきさかりが3年連続
  • ハナエチゼン、いちほまれも特Aを獲得!

主要4品種が全て特Aとなり、本県農家の米づくりの技術力が高く評価された結果となりました。

しかし、本年から米の直接支払交付金が廃止され、これまでを維持する以上の所得の確保が重要となります。もちろん、米の品質・食味はもとより収量の向上にもより一層取り組む必要があります。近年は地球温暖化で毎年高温条件下での登熟が懸念されます。優良な初期分げつの確保と適期中干しで遅発分げつを抑え、穂揃いの良い草姿に誘導し気象変動に左右されない稲作りを目指しましょう。
ポストこしひかり「いちほまれ」もいよいよ本格栽培が始まります。昨年以上の収量・品質をめざし頑張りたいものです。

♦2 さあ! 今年も頑張るぞ!9つの基本技術で特Aだ

おいしい米づくりの一歩は...!?
トータルな取り組みの見通しです

収量・品質の向上を図るためには、苗作りから田植え、初期生育の促進、生育中期での生育コントロールや収穫期までの水管理などのトータル的な取り組みが必要です。基本技術 の励行に努めましょう。

9つの基本技術励行

推進技術 内容
育苗 うすまきの励行(1箱当たり140g)
健苗の育成・播種後日数にあわせた温度・水管理
・育苗期間の厳守(稚苗18〜22日)
耕耘 ・作土深15 ㎝を目標にゆっくり起こす
・田面の均平化、漏水防止に努める。(除草効果を高める)
田植 適期田植の励行と過剰生育防止のための1株あたり3、4本の細植え
適正施肥 ハナエチゼン、あきさかりは「エコ肥料」から「化成肥料」にかわりまし た。
施肥量、開度調整は再確認、生育状況に応じた追肥等の実施
中干し等 遅発分げつを抑制するため、早めの中干し・溝切の実施
除草・防除 7月上旬までの畦畔除草の徹底、生育ステージに対応した適期防除・防除
水管理 中干しから出穂期、出穂期から刈取り直前までの適正な水管理
適期収穫 品種毎の積算温度をもとにや籾水分・籾の黄化程度に応じた適期刈取り
土づくり 土壌調査に基づくケイ酸、リン酸、カリ等の土づくり資材の施用

♦3 水稲の育苗管理について

育苗期の病害虫発生予報
苗立枯細菌病は「小発、局中発」

福井県農業試験場は4月3日、病害虫発生予報第3号を発表しました。水稲関係では苗立枯細菌病等の発生を「小発、局中発」と予想しています。

3カ月予報では、4月の気温は高く、降水量は少ないと予想されています。種子消毒の徹底や育苗ハウスの温湿度管理(夜間5℃以下、昼間25℃以上にならないように管理し、多湿を避ける)に気を配り、健康な苗の育成に努めましょう。

病害虫名 発生時期 被害発生程度 発生量
ばか苗病 最盛期4月下旬 少発 育苗期の発生量は、前年並み
苗いもち 初発は5月上旬 少発 平年よりやや多い
各種苗立枯病
(糸状菌)
初発は4月中旬 少発 平年並み、前年並み
もみ枯れ細菌病等 初発は4月下旬 少発、局中発 平年より多、前年並み

育苗期に発生する主な病害の特徴

病名 症状 多発条件
苗立枯病 フザリウム
字際部・籾に白~淡紅色のカビ 緑化期の低温、過湿、高pH
リゾープス
マット苗表面が白いカビ 出芽期の高温多湿
トリコデルマ
白→青緑色のカビが密生 低pH
ピシウム
根が水浸状に褐変し枯死 緑化期の低温、過湿、高pH
もみ枯細菌病
葉鞘部の腐敗が激しく葉が抜けやすい
葉身が開いたまま淡褐色になって枯れる
出芽から育苗初期の高温、多湿
苗立枯細菌病
葉鞘部の腐敗が激しく葉が抜けやすい
葉身が針状に巻き赤褐色になって枯れる
出芽から育苗初期の高温、多湿

水稲の育苗管理

(1)高温注意!暑いがコワい!

ハウス内の温度は10~30℃を目標に(35℃まで)
特に日照のある日中(昼間)、強風時にハウスを閉めているときに温度が上がりすぎるおそれがあります。


(2)水のやりすぎ注意!

緑化期~1葉期頃のかん水は少なめに
床土の表面が乾いたら、表面が濡れる程度に少量のかん水を。初期のかん水量が多いと、マット形成が不十分になります。夕方のかん水は控えましょう。

育苗後半は、朝つゆの状態で判断しましょう

午前10時ごろまでに朝つゆがなければ、たっぷりとかん水を。 朝つゆが多ければ、時間をずらしてかん水する。
基本は1日1回、じゅうぶんに。
日射量が多く乾燥しやすい時期は、その都度かん水。
15時以降のかん水はしない。
ダイヤカットのプラ箱は、水持ちがいいので量に注意しましょう。


♦4 平成30年度の坂井農場の取組について

低コストで品質・収量アップのための試験
坂井平野にある農場だからできる試験です

平成29年度は、品質面においてはじめてハナエチゼン、コシヒカリ、あきさかり、いちほまれの4品種が同時に「特A」を獲得しました。一方、収量面ではいま一歩でした。それゆえ

  • これまで以上に品質・収量の高いコメ作り
  • 生産コストの削減
  • 市場ニーズに対応した収益性の高い米づくり

が求められています。
坂井農場ではこれらを念頭に置き平成30年度は次を重点的に取ります。

(1)花咲ふくい米の品質・食味向上

食味ランキング「特A」の継続獲得をめざし、コシヒカリ等の品質・収量向上を図るため、適期田植えを基本に土壌改良資材や有機質肥料等を用いた試験を実施します。
気象や生育状況に対応した適切な技術対策情報を提供するため、県と連携し定期的に調査を実施します。

(2)いちほまれの技術確立

いちほまれの収量・品質の向上を図るため、県と連携し新たに開発されたエコ肥料試験や全層施肥と側条施肥の窒素の吸収量の相違についての試験を実施します。

(3)低コストへの取組み

生産性向上を図るため、コシヒカリ等を対象とした栽植密度試験や新開発の低コストの化成肥料試験を実施します。

(4)こだわり米の推進

エコファ-マー栽培から特別栽培米へのエコファ-マー技術の向上を図るため、コシヒカリ・あきさかりを対象とした新たな資材の栽培試験を実施します。

  • A圃場 ハナエチゼン・あきさかり・いちほまれ
  • B圃場 いちほまれ
  • C圃場 (直播)ハナエチゼン・コシヒカリ・あきさかり
  • D圃場 コシヒカリ

♦5 雑草対策、除草剤を上手に使おう

前年の雑草見極め薬剤を選ぼう!
水田の水管理を万全に、除草剤を正しく使おう!

水田の雑草問題は永遠の課題です。ヒエの穂が稲穂よりも多くみられる水田やコナギやホタルイなどが多発している水田を、見かけたことがあるのではないでしょうか。
これらの原因は次の3つが考えられます

  1. 水田の水漏れ、不均平などの水田管理に不備がある
  2. 散布前後の水管理に不備がある
  3. 除草剤の選択・散布に不備がある

水田雑草の種類は約200種といわれ、繁殖の仕方は1年草雑草と多年雑草に大別されます。その発生は、種子や塊茎などから一斉に発生するものや長期間続くもの、湛水状態やクサネムやアメリカセンダングサなどのように田面が露出した時に発生するものなど多様です。

除草剤を適期に散布できないと発生期間が長い雑草が後期から発生したり、大きく成長した雑草が枯れ残ったりします。また、水稲除草剤の多くは湛水状態で散布するので、畑地 での除草剤散布に比べ簡単ではありますが漏水などにより効果は安定しません。効果的な防除には、水田雑草や除草剤に関する知識と適切な圃場管理が必要です。

水田の準備・適正な水管理とは?

除草剤の有効成分を均一に水田内に行き渡らせ、漏れ出ないようにすること
処理後7日間は水尻や畦畔の亀裂などから流失しないよう注意し、かけ流しはしない

特に区画の大きな水田では、水を張ったとき水深のばらつきが大きく、一層精度の高い均平作業が必要です。畦畔は、前もってあぜぬりを行い、崩れやモグラ穴など水漏れの原因となることのないようしっかりと補修しましょう。

覚えておきましょう
水田雑草の種類と特徴

1年草雑草......種子で繁殖する雑草で、生産する種子の量は非常に多い。ノビエ1株で2000粒以上、土壌中での寿命も10年あるいはそれ以上という調査結果があり、一度にたくさんの種子が落化すると長年にわたって発生します。

ヒエ、タマガヤツリ、コナギ、アゼナ、キカシグサなど。

多年草雑草......地上部での茎葉が枯れた後も土壌中での塊茎や根・茎などの繁殖体に栄養分を蓄えておき翌年そこから芽を出す雑草です。
繁殖体の数は1 年草に比べ少ないのですが、地下の深いところから発生したり数個の芽をもっていたりして、1個体の生命力が強く、発生すると厄介です。ですが塊茎の生存数が長くて数年と1年草雑草に比べ短いのも特徴。そのため塊茎を付けさせないよう防除するとその発生は激減します。

ミズガヤツリ、ウリカワ、オモダカ、クログアイ、マツバイ、ウリカワ、ホタルイなど。

ホタルイは多年生雑草に分類されているが水田では種子からも発生しますのでしっかり防除をしましょう。

除草剤の種類

  • 初期剤
    代掻き後、早い時期から発生してくる1年生雑草などを抑える。効果の持続期間が比較的短く、散布後に発生してくる雑草を防除する準備が必要。
  • 一発処理剤
    主要な一年生雑草、多年生雑草に効果が高く、効果の持続期間も長い。条件の良い水田では1回の処理で対応できる。
  • 中後期剤
    初期剤や一発処理剤で防除しきれなかった草種、あるいは効果が切れて発生してきた草種を防除する。

除草剤の選定

除草剤選びには、前年にどういった除草剤を使用しどんな草種が残草したのかを参考にすると良い。

  • (例1)一発処理剤を使用し、例年防除できていたコナギやホタルイなどが大量に残存していた場合は、抵抗性雑草の発生を疑いそれらに効果のある一発処理剤を施用する。または、初期剤と中後期剤の体系処理での防除を計画する。
  • (例2)多年生雑草やヒエが後期に発生した場合は、中後期剤での防除を計画する。
  • (例3)オモダカ、クログワイなど問題雑草が発生した水田では、長期間発生が続くので適用時期の範囲内での時期を見極め散布し、塊茎をできるだけつくらせないことで次年度以降の発生量を減らす。