いまさら聞けない基本技術をおさらい!農場長が教えるJA花咲ふくい管内の稲作栽培 - 5

いまさら聞けない基本技術をおさらい!農場長が教えるJA花咲ふくい管内の稲作栽培

第5回目

  1. 平成29年度の気象を振り返る
  2. 平成29年産米の作柄と生育を振り返って
  3. 気象対策試験の結果(坂井農場)
  4. 平成29年度のまとめと生育の特徴
  5. 平成30年産に向けて気を付けるところ
  6. いちほまれ肥料試験の結果

[コラム]おいしくて、強い稲に向けて「ケイカルあらかると」

●1 平成29年の気象を振り返る●

気象概況

5月

田植後の5月の気象は、比較的順調に推移しました。

  • 平均気温(平年比+1.4℃):かなり平年上回った
  • 日射量(112%):かなり平年上回った
  • 降水量(平年比41%):かなり少なかった

6月

梅雨入りは21日(平年12日)で平年に比べかなり遅い入りでした。

  • 平均気温:上中旬(-1.6℃)かなり低く下旬は平年並み
  • 日射量(125%):かなり多い

7月

上中旬は平年に比べ気温、日射量、降水量ともに上回りました。

  • 平均気温:上中旬(上旬+2.0℃、中旬+2.9℃)かなり高く、その後平年並み
  • 日射量:上中旬(上旬113%、中旬141%)かなり多かったものの下旬(84%)は少なかった
  • 降水量:下旬(148%)は平年を上回って推移した

幼穂形成期:ハナエチゼン、コシヒカリは平年より遅く、あきさかりは平年並みとなった。
出穂期:ハナエチゼンは平年並み、コシヒカリ、あきさかりは7月末~8月初めと平年に比べ早くなった。

坂井農場の様子

8月

梅雨明けは、8月2日頃(平年7月24日)でかなり遅いほうでした。
台風5号(8月7日~8日)の通過や前線の湿った空気の影響で曇りや雨の日が続いたのが8月の気象の特徴です。
月全体では、気温は平年並み、降水量(167%)は多く、中旬の日射量(88%)は少なかったです。

  • 平均気温:上旬(28.6℃)やや高い
  • 日射量:やや少ない
  • 降水量(314%):多い

9月

上旬は高気圧に覆われて晴れた日もあったが、中旬以降は台風18号や前線・気圧の谷の影響により曇りや雨の日が多かった月でした。

  • 平均気温:上旬は(-1.6℃)低い、中旬も(-0.8℃)低め
  • 日射量:上旬は(118%)とかなり多く、中旬は(97%)とやや少なめに
  • 降水量:上旬は平年並みだったが、中旬は(135%)多め

●2 平成29年産米の作柄と生育を振り返って●

全国と福井県の作柄-全国平年並み、北陸やや不良、福井平年並み

12月5日公表された全国の作柄は、16年産と比べ10㎏減少し

  • 作柄534㎏/10a
  • 作況指数100

で平年並みとなりました。

全国的にみると、北海道・西日本は天候に恵まれましたが、主産地の東北や北陸の一部地域は、夏場の日照不足や長雨の影響を受けました。

作況指数 地域 作柄
103 北海道 中国 やや良
101 近畿 四国 九州 平年並み
100 東北 東海 平年並み
98 関東 北陸 沖縄 やや不良

北陸の作柄は、98と13年ぶりにやや不良となりました。
県別作柄は、福井の作況指数が101、石川99、富山100、新潟96でした。
福井の10a当たり収量は525㎏でした。

坂井地域の作柄は今一歩・品質は良好

坂井管内の作柄をみると、全体的にハナエチゼン、コシヒカリ、あきさかりのいずれの品種も、前年、平年を下回りました。

▼県全体の1等米比率

  • ハナエチゼン(92.9%)
  • コシヒカリ(93.3%)
  • あきさかり(92.7%)

▼坂井地域の1等米比率が県平均を上回りました!

  • ハナエチゼン(95.3%)
  • コシヒカリ(97.8%)
  • あきさかり(95.9%)

▼品種別格落の原因

一昨年多発したハナエチゼンのカメムシによる被害は著しく減少しました。
品種別格落原因は次の原因が目立ちました。

  • ハナエチゼン...カメムシ
  • コシヒカリ...胴割れ
  • あきさかり...胴割れ

坂井管内の格落理由割合(1等→2等)

単位は俵(%)

  胴割れ 乳白 未熟 カメムシ その他
ハナエチゼン 316(7.9) 360(9.0) 404(10.1) 2612(65.4) 303(7.6)
コシヒカリ 565(30.3) 312(16.7) 493(26.5) 416(22.2) 79(4.2)
あきさかり 730(59.3) 0 253(20.5) 249(20.2) 0

●3 気象対策試験の結果(坂井農場)●

気象対策試験の収量は、農場平年収量(過去10年の平均収量)と比較すると

  • ハナエチゼン 53.2kg/a(92)
  • コシヒカリ 50.0㎏/a(92)
  • あきさかり 59.2㎏/a(90)
  • 直播コシヒカリ 40.2㎏/a(89)

とかなり下回りました。

品種別の収量構成要素でみると
移植の場合、総籾数少なく登熟やや不良で収量低下
直播の場合、総籾数多く登熟かなり不良でこちらも収量が低下しました。

坂井農場の様子

●ハナエチゼン

収量は、53.2kg/aで屑米重が多く、昨年・平年を下回りました。収量構成要素からみると総籾数がやや少なく、登熟歩合は平年並み。品質は、良質粒77%で平年並み、食味値81、着色米少なく良好でした。

区分 わら重 籾重 粗玄米重 屑米重 精玄米重
29年 54.3 74.8 60.2 7.0 53.2
28年 63.6 78.5 63.3 2.0 61.3
平年 62.2 79.7 64.2 6.4 57.8

●コシヒカリ

収量は、50.0kg/aで屑米重が多く昨年・平年を下回りました。収量構成要素からみると総籾数がやや少なく、登熟不良。品質は、良質粒75%とやや高く、食味値82とほぼ平年並みでした。

区分 わら重 籾重 粗玄米重 屑米重 精玄米重
29年 62.7 72.4 58.2 8.2 50.0
28年 84.9 83.6 67.2 6.8 60.4
平年 68.3 73.2 59.3 5.2 54.1

●あきさかり

収量は、59.2kg/aで昨年・平年を下回りました。収量構成要素からみると総籾数が少なく、登熟もやや不良。品質は、良質粒80%、食味値84と高くなりました。

区分 わら重 籾重 粗玄米重 屑米重 精玄米重
29年 63.4 82.9 67.0 7.8 59.2
28年 78.9 94.7 77.3 13.0 64.3
平年 85.6 88.0 72.1 6.3 65.8

●直播コシヒカリ

収量は、40.2kg/aで屑米重多く昨年・平年を下回りました。収量構成要素からみると穂数・総籾数がかなり多く登熟不良。品質は、良質粒68%、食味値83とほぼ平年並みでした。

区分 わら重 籾重 粗玄米重 屑米重 精玄米重
29年 53.2 65.1 52.2 12.0 40.2
28年 75.0 66.4 52.4 6.3 46.1
平年 71.1 66.7 53.4 7.9 45.5

●4 平成29年度のまとめと生育の特徴●

(1)気象

例年になく特異な気象

6月上中旬の低温、8月上旬の台風5号の通過や前線の影響で、成熟期の気象は曇りや雨の日が多く8月の日照時間も少なかったようです。

特に台風5号の影響により8月8日には春江地域観測史上最高の最大風速22.6m/sを記録。8月は、大雨、雷と突風に関する気象情報が8回発表されるなど荒っぽい気象となりました。このため、曇天、雨、日照不足、風と出穂の時期が絡み合い、登熟に影響を与え、品種、栽培形態ごとに差をもたらしました。

気象対策試験の登熟歩合は、ハナエチゼンはほぼ平年並み、コシヒカリ・あきさかりはやや低く、直播コシヒカリはかなり下回りました。

坂井農場の様子

(2)屑米重の増加

全体的にコシヒカリ、あきさかりで屑米重が増加し、収量が低下

気象対策試験では、本年度は、いずれの品種も屑米重が平年に比べ増加し、直播コシヒカリ(1.7倍)、移植コシヒカリ(1.5倍)、あきさかり(1.2倍)でハナエチゼンはほぼ平年同様でした。

(3)生育の特徴

茎数の増加により、稲体もボリュームが少なくなるなど影響あり

生育前半、草丈はやや短め~平年並みに、茎数は少な目に推移しましたが、コシヒカリ(移植・直播)、あきさかりでは6月中旬以降急激に茎数が増加しました。
特に、平年に比べ移植のコシヒカリ、あきさかりで顕著で有効茎歩合は低下(むだな茎が増えて栄養を取られる)。急激な茎数の増加は、6月の多日照・低温、地力窒素の発現や茎数の緩慢等の影響が考慮されます。

成熟期の稲体は、全体的に草丈短く稲体のボリュ-ム・籾重が少なく1穂籾数も同様に少ない傾向に。コシヒカリの草丈は、平年に比べ短かったものの上位節間は昨年に比べ伸長しました。

(4)収量構成要素(品種別)

穂数多めながらも、一穂あたりの粒、総籾の数は少ない傾向に

気象対策試験の品種別収量構成要素をみると、移植栽培では

  • 穂数は多い
  • 1穂粒数が少ない
  • 総籾数は少ない

傾向でした。直播栽培では、穂数多く総籾数もかなり多くなりました。

登熟歩合は、

  • 早生のハナエチゼンはほぼ平年並み
  • コシヒカリ、あきさかりは平年に比べやや不良

直播コシヒカリの登熟は、穂数過剰、出穂期以降の日照不足の影響を受け、かなり悪くなりました。

収量構成要素

( )は平年比

区分 1穂粒数 穂数
(本/m²)
総籾数
(百粒/m²)
千粒重 登熟歩合
ハナエチゼン 66
(92)
452
(104)
298
(96)
21.7
(99)
84
(99)
コシヒカリ 73
(88)
384
(107)
280
(94)
21.4
(102)
80
(94)
あきさかり 67
(87)
470
(105)
314
(89)
21.7
(100)
82
(96)
直播コシヒカリ 71
(99)
528
(129)
372
(132)
21.0
(101)
60
(75)

(5)病害虫

カメムシ発生は少なく、病害虫も少なめだった

本年度の病害虫の発生状況は、カメムシの注意報も発令されず平年と比較し全県的に少なくなりました。8月の雨の影響でカメムシの活動が低下したと考えられます。
坂井地域では、6月下旬ではイネミズゾウムシの発生が平年に比べ目立ちましたが、その他の病害虫は少な目~平年並みでした。

坂井の主要病害虫の発生面積(農試水稲サンプリング調査)

(ha)

区分 穂いもち
(8/中)
紋枯病
(8/中)
カメムシ
(7/上)
ニカメイガ
(8/中)
イネミズゾウムシ
(6/下)
29年 28 777 68 307 912
28年 66 488 172 93 412
平年 147 937 65 378 555

●5 平成30年産に向けて気を付けるところ●

過去5年間の稲作期間(成熟期)の気象を振り返ってみると、

  • 25年度は8月下旬から9月中旬の大雨
  • 26年度は8月の日照不足
  • 27年度は8月中旬から9月の低温・日照不足など 異常気象が常態化。
  • 28年度は台風や秋雨前線の影響も少なく稲作期間全体にわたり日照時間に恵まれ、収量の安定・品質の向上に結び付きました。
  • 29年度は、生育前半の低温、8月中旬以降の曇天、日照不足など不順な気象でした。

収量構成要素からみると、本年の特徴は

  • 穂数が多かったこと(6月中旬からの急激な分げつの増加)
  • 登熟不良で屑米重の増加、収量低下に結びついた

と考えられます。

坂井農場の様子

平成30年度は次の点に留意したコメ作りに取り組んでください

  • ポイント1:初期生育を促進し有効茎を早期に確保
  • ポイント2:中期の生育を抑制し適正な籾数を早期に確保
  • ポイント3:根の活力維持と葉色の薄い圃場での穂肥施用等による登熟向上
  • ポイント4:秋起しと土壌診断に基づく土づくり

●6 いちほまれ肥料試験の結果●

ポストこしひかりを目指し新しく育成された越南291号は、「日本一おいしい誉れ高きお米」として「いちほまれ」と命名されました。
本品種のおいしさはもとより、病気に強く、高温でも安定した品質が見込まれ、倒伏に強く作りやすい品種です。
農場では、本年度、初めて本格的にエコ肥料試験を実施しました。その結果は、全体的には屑米重が多く収量面、各資材とも今一歩の感でした。

肥料試験は、次年度本年度の結果を踏まえ新資材での試験を継続して取り組み皆様に研修会の開催や情報を提供していきます。

いちほまれ圃場

肥料試験結果

調査項目 アール当り収量
わら重
(kg/a)
籾重
(kg/a)
籾摺歩合
(%)
粗玄米重
(kg/a)
屑米重
(kg/a)
精玄米重
(kg/a)
比率
(%)
資材A 88.9 73.3 81 60.0 9.1 50.9 107
資材B 93.0 73.7 80 58.6 9.5 49.1 104
資材C 89.2 70.4 78 55.1 8.8 46.3 98
資材D 88.2 70.1 80 56.0 8.6 47.4 100

●[コラム]おいしくて、強い稲に向けて「ケイカルあらかると」●

1 ケイ酸はなぜ必要なの?

イネ科植物の多くは、多量にケイ酸を蓄積する特性から「ケイ酸性植物」といわれ、稲はその代表的な植物です。
売れるコメ作りのポイントは、おいしさ。このためには、みのりを良くして、米のタンパク質を低く抑えることが重要です。このためには、窒素の適正施用だけでなくケイ酸を吸収させなければならないことがわかってきました。ケイ酸は、光合成を活発させ乾物生産に対する効果が大きいからです。

2 ケイ酸は水稲にたいしてどんな働きをするの?

水稲に対する効果はいろいろありますが次のような効果があります。

ケイ酸の効果の図

3 どれくらいのケイ酸が必要ですか?ケイ酸不足は稲にどんな影響を与えますか?

土壌条件等によって異なりますが、健全な稲は10%以上で、多いものは20%近いという例もあります。つまり玄米収量500~600kgの水田では、ケイ酸が100~120kg必要となります。
ケイ酸含有率が10%を切ると、稲が軟弱になり、病害虫や倒伏、異常気象に対する抵抗力が衰え、品質・収量が低下します。資材の施用にあたっては、土中の有効ケイ酸、灌漑水のケイ酸、わら等の施用量により異なります。JA普及センタ-にお問い合わせください。

4 ケイカルはいつ施用したらいいですか?

ケイ酸は、水稲の生育初期から後期まで吸収されます。基本的には、すき起こす前に全面に散布します。散布時期は、春散布に比べ秋にわらと同時に鋤き込むと生わらの腐熟促進効果もあり最も効果的です。ケイカルの成分は、水にすぐ溶けず秋散布しても成分が流亡することはありませし労力面からも有利です。春施用も、十分効果があります。

5 ケイカルの追肥の効果はありますか?

稲の養分吸収時期は成分によって違いますが、ケイ酸は幼穂形成期から出穂期にかけて最も多く吸収されます。ケイ酸が後期に多く吸収されることは、登熟向上に大きく影響します。初期にケイ酸が不足すると根の発達が悪くなります。このため基肥として、施用するのが原則です。しかし、基肥として施用できなかった時や施用量が少なかったなどは、幼穂形成期の前に追肥を施用すると収量品質を高めます。